公開: 2023年3月29日
更新: 2023年4月17日
15世紀の中頃にドイツで印刷機が発明され、それまでの手作業による写本に代わって、印刷機を使って、大量に印刷物を生産する方法が生み出されました。宗教改革を推進しようとしていたドイツのルターは、ラテン語の聖書をドイツ語に翻訳し、それを印刷して、出版しました。これによって、聖書を普通の庶民でも買える物にして、普通の人々でも、聖書の内容を読み、理解することができるようになりました。
16世紀になると、そのような印刷機を使って、書きものを印刷し、印刷物を売る商売が生まれました。つまり、出版業です。出版社は、ある作者が書いた文書を印刷して、売り出しますが、その売りに出された文書を手に入れて、手に入れた文書を印刷して売れば、最初の出版社よりも、多い儲けを得ることができます。このような文書の「盗み」行為を防止するため、ヨーロッパ社会では、「著作権」と言う考え方が生まれ、既に出版された内容を、コピーして印刷し、売ることを禁じるようになりました。
著作権は、その意味で、最初の知的財産権を保護するための仕掛けでした。最初の印刷物に、著作権を宣言する文言を書くだけで、著作権が成立し、著作権が主張されている文書と同じ内容の文書を、印刷して売ることはできません。ところで、コンピュータのプログラムも、この著作権で、知的財産権を守るべきだと考える人々がいます。しかし、著作権は、著作物の表現を守ることが目的なので、書きものとして、見た目が同じであることが重要です。
プログラムの場合、表現を変えても、同じ計算を行うようにすることはできます。つまり、元のプログラムを参考にして、計算の順序などを少し変えるなどすれば、「見た目」は、同じとは思えないプログラムに変換することもできるのです。それでは、本当の意味で、プログラムの知的財産権は、著作権で守ることはできません。